工夫で大体どうにかなる

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Teppenという、(楽しさ)純度が有史以来最高のカードゲーム

teppenthegame.com

カプコンガンホーによる共同カードゲーム、Teppenをインストールしてから12時間は、プレイし続けた記憶しかないです。

その後も、空いている時間があればずっとやっている日々が3日ほど続きました。

 

過去に触れたデジタルTCGの中でダントツの面白さを誇った本ゲームですが、その面白さ故に一旦離れることこそ良い関係を気づけると判断しましたので、ゲームの感想および何が私をこんなにもTeppenを愛させたのかを考察し、一区切りの結論を書きます。

 

まず、結論から言うと、このTeppenは「蒸留酒の様に(楽しさ)純度が異常に高いゲーム」でした。

根本的なところで制作陣の腕が良いのですが、カードゲームが持つ面白さをよく理解して発展させただけではなく、ゲームの性質が持つ制約も面白さに変化させ、とにかくゲームにおける「楽しさ」の割合を極限まで高めているのが本作です。

 

・デジタルだから出来る一線を画したリアルタイム性

ハースストーンを始め、デジタルになったからこそ出来る処理を入れてくるゲームは今日日いくらでもあります。リアルタイム物カードゲームも確か1つか2つありました。

しかし、本作ほどそれを活かしているゲームは見たことがありません。

 

自動的に増えていくMP(マナ)を元に、互いに勝手に召喚して、勝手に戦闘してよい。これはカードゲームに限らずすべてのターン制ゲームに存在する待ち時間という問題を解決したやり方です。

相手が長考するなら「早くしろ」ではなく「どうぞごゆっくり(ボコりながら)」と言える。これはとても平和的かつ(ある意味)暴力的な変化です。

 

しかも、手札は使ったら補充される!

これは恐ろしいことです。全てのカードに「1枚ドローする」という効果がついたのですから、ハンドアドなど過去の遺物です。ライフ回復呪文も「アド損の権化」とはもう言わせません。

そしてこの「リアルタイム性」と「手札補充」が合わさることで、MPが許す限りすきなだけ動ける、選択し続けれる。何と刺激的なことでしょうか。

結局、我々は選択が、そしてその結果を知ることが楽しくてゲームをしてるのですから、体感した時の衝撃は大変なものでした。

 

選択といえば、リアルタイム性による恩恵は召喚するタイミング、およびそれによる戦闘処理にも深く影響を与え、選択の幅を大きく広げています。

従来、召喚するタイミングといえば「どっちを先にだすか」、「1ターン遅らして出すか」どうかぐらいでした。しかし、ターンを廃止してリアルタイムにした本作では、「何秒後に出すか」という、言葉にするとシンプルですが、実際にやると選択肢の多さに圧倒されるようになっています。

このゲームでは呪文を唱えると対応して行動できる、所謂「スタック」やら「チェイン」という後の先を取れるルールになっているのですが、一部の行動には割り込めません。それを利用し、相手が2回以上の行動、例えば召喚してそれを強化するなど、しようとしていると予測したら、上記した割り込めない行動の発動準備(事前に指でドラッグしておく等)をしておき、相手が1つめの行動をした瞬間にこちらも行動して、一方的に相手の戦略を潰すこともできます。

他にも、召喚には割り込めないことを利用し、相手モンスターの攻撃が空の戦闘エリア(そのままの場合、プレイヤーに攻撃が行く)に届く寸前に相手モンスターよりお起きな、または相性の良いモンスターを召喚したり、逆にそれを予測して事前に強化呪文を使っておくなど、まさにデジタルならではの様々な駆け引き

これらは、ただデジタルだから出来たというより、「デジタルにすることで何が出来るようなるのか?」を深く考え、それに基づきカードゲームというものを再構築したからこそのリアルタイム性であり、楽しさであると思います。

 

・随所に散りばめられた「気持ちよさ」

先程、この本作はカードゲームを深く理解した上で再構築した物だと書きましたが、それはこのゲームをよく表していると思います。

何故なら、「リアルタイム性」という分かりやすく派手なところだけではなく、様々な部分でカードゲームの面白い部分をより面白くして、難点だった部分を解決しています。

 

例えば、MTG遊戯王の花形の1つに対抗呪文の応酬がありますが、デジタル化すると一々反応するので煩わしいところがあります。そこで本作では、どちらかが呪文を発動させると通常リアルタイム状態からアクティブレスポンスというモードに移行し、追加のMP(マナ)をお互いに得た上で呪文の応酬を開始します。これは「呪文は好きなタイミングで発動できるが、自分からは仕掛けない方にインセンティブ(相手に追加MPのタダ乗りされるリスクがある)が発生し、かつ一度使われると互いに呪文の応酬が(例えそれまでMPを持っていなくても)発生する」という、まさに「より楽しく。より煩わしくなく」という状況を作っています。

 

他にも近年のカードゲームでは重要になっている「デッキに複数の色(勢力)を入れれた方が楽しいが、制限がないと開発側が未想定だった戦略によってゲーム性が壊れる可能性がある」という問題にも「入れれるが最大MPが減る」という素晴らしい解決法を思いついています。最大MPが少ない以上、開発側がチェックしないといけない量は少なくなりますし、単色の時にだけ大型エースモンスターを使えるというのも心地よさと納得感があります。しかも、一方で低コストに押さえれば好きな2色を組み合わせれるのですから、アイディアが膨らみます。

これは制約を面白さに変えた好例だと思います。

 

・再構築された「楽しいゲーム」

このように、本作Teppenはただカードゲームをデジタル化させた訳ではなく、そうすることによって何が可能になったのか、そもそも何がカードゲームを楽しくしているのかをとても深く掘り下げた末に出来たカードゲームだと思います。

恐らく、今後は本作のフォロワーゲームも数多く出来るほどの完成度と革新性です。

デジタルで、新しい前提で何が出来て何が変わるのか?

各業界ではこの質問を契機に製品やサービスが0からの再定義が行われていると思いますが、本作はこれに答えるための過程で「呪文応酬時は追加リソースがもらえる」や「最大MP低下という制約でリスク管理と楽しさを生む」といった、デジタルが無くても出来た発明(実は私の知らないアナログゲームからヒント得ているかもしれませんが)を成したことを含め、理想の答えの1つなのではないでしょうか?

今後、何かを作る歳は是非ともその再構築の技を参考にしたい。そう思わせてくれるゲームとの出会いでした。